ルパンはトモエの呪縛から自由になれるのか?
アニメ「ルパン三世PART6」の24話「悪党が愛すもの」の考察ページ。
トモエに操られるかのように、馬昆子村へとやってきたルパン。
そこはルパンが幼少期に過ごした屋敷だった。
生まれ育った場所で、ルパンはトモエとどう決着をつけるのか?
PART6の総評も記載する。
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ルパンはいつ正気に戻ったのか?

ルパンはトモエから箱のありかを聞きだすために、一味に一芝居売ってもらう。
不二子「で、いつ正気に戻ったわけ?」
トモエの詩に縛られたルパンは過去の記憶が溢れ、トモエの呪縛から逃れられないでいたようだ。

しかし過去の記憶の中でも、次元・五ェ門・不二子が現れ、ルパンはやっと目が覚めたのだという。

つまりルパンの目が覚めたのは、屋敷の前で「ジャケットを着た時」である。
宝物庫のお宝を盗んだのはルパン本人だった

そもそも第2クールの始まりはこうだ。
ルパン「屋敷から唯一お宝を盗み出した女・・俺の母親だ」
トモエは「アルセーヌ・ルパンが厳重に管理していた宝物庫から唯一宝を盗み出した女性」であり「ルパンの母親」であるということ。
このトモエの神秘性が視聴者を惹きつけていたように思う。
しかしこの前提は覆り、ルパンは全てを思い出した。
自分で宝物庫の仕掛けを解いたこと、そしてやはりトモエは自分の母親ではないということを。
トモエがルパンが正気であることに気づいたのはいつ?

宝物庫に仕掛けられた罠をかいくぐり、箱が安置されているはずの扉を開けるルパン達。
ルパン「えっ?」
しかし、中には何もなく突然爆発が起きる。
それはトモエが最後に仕掛けた罠だった。
トモエ「愛してるわ、坊や」
アニメ「ルパン三世 PART6」24話
ルパン「愛してるぜ、母さん」
この時のやり取りで、トモエはルパンが正気であることに気づいた。
トモエ「愛してるわ、坊や。あなたは?」
ルパン「本当の母さんにそんなこと言わないよ」
トモエ「どうして?」ルパン「フフッ、言わなくても分かるだろ」
アニメ「ルパン三世PART6」23話
暗示にかかっている時、ルパンは「愛してる」と言わなかったからだ。
トモエの最期の呪縛
ルパンのルーツが分かる箱の行方は再び分からなくなった。
あれこれ悩んでいるルパンに「考えすぎなんだよ」と次元が助言する。

いい?人を欺く時は、必ず二重三重に策を練るのよ。
アニメ「ルパン三世PART6」14話
ルパン「あっ、そうか。俺だったら・・」
ルパンは知らず知らずのうちに、トモエの「二重三重に」という言葉に縛られていた。
だからシンプルに考えることができなかったのだ。
宝物庫より安全な場所、それは「トモエが箱を持っている」という答えだった。

ようやく自分のルーツが入った箱を手に入れたルパンだったが、それを燃え盛る屋敷の方へと放り投げてしまう。
ルパン「何にせよ俺を縛りつけるもんに変わりねえ」
ルパンにとっては、自分のルーツですら自分を縛るものだった。
それにしても、トモエはどうしてルパンを我が物にしようとしたのだろうか。
そんなことをしなければ、たとえ血の繋がりなどなくても、ルパンはトモエを母と慕っただろう。
結局はトモエも「ルパンを手に入れる」ということに囚われていたのかもしれない。
マティアも呪縛から解き放たれる
ルパンがトモエを銃で撃ち、トモエは絶命。
マティア「お前も私の獲物だ!お前さえいなければ、私はこうはならなかったんじゃないか!」
自分の手でトモエを殺すつもりだったマティアは怒り、ルパンを殺そうと牙を剥く。
そこへ銭形が現れ、マティアに刺されて生死の境を彷徨っていたアリーが一命を取り留めたことを聞かされる。

トモエ「狙った獲物は必ず殺すの」
アニメ「ルパン三世PART6」24話
マティア「はい、先生」
ルパン「これからのお前をどうするかはお前自身が決められる」
ルパンに諭され、ルパンを殺そうとすることがトモエに縛られていることだとマティアは気づく。
マティアは自分自身で考え、ルパンを殺さないことを決めた。
ルパン「理由は?」
マティア「これからは狙った獲物を殺すも生かすも私が決めるからだ」
マティア「そうだ、アリアンナさん。せっかくだから連絡先交換しよう。またご飯食べたいし」
アニメ「ルパン三世PART6」18話
アリー「ええ、そうしましょう」
狙った獲物は必ず殺すはずのマティアが、アリーだけは殺し損ねた。
アリーが上手く急所を躱したのか、交流があったアリーにマティアが手心を加えたのかは、今となっては分からない。
しかしアリーが生きていることで、マティアはようやくトモエの呪縛から解き放たれたのだった。
ルパン三世PART6の感想

ルパン「あばよ~とっつぁ~ん!」
銭形「待て~ルパ~ン!」
このラストを見て、「あ、いつものルパンだ」と思った方も多いだろう。
今回のPART6は挑戦的なルパンだったという印象が強い。
オムニバスエピソード毎に脚本家が変わり、さまざまな形のルパン三世を見ることができたからだ。
悪く言うなら、「統一感がないルパン」と言ってよいだろう。
しかしルパン三世シリーズは長く続いているだけに、「ルパン三世はこうでなければいけない」という声が多いのも確かだ。
その固定概念を刷新しようというのが、PART6の趣旨だったのではないか。
ルパンがトモエの呪縛から解き放たれたように、我々も「ルパンはこうあらねば」という呪縛から解き放たれる時が来たのかもしれない。
何故なら、ルパンは何物にも縛られないことを愛する悪党だからである。
トモエの教えを受けた女性たちが、その後自分自身の足で力強く歩き始めたのが描かれたように、ルパン三世が我々の固定概念から解き放たれたとしても、決してルパンの魅力がなくなることはないだろう。
その入り口として「ミステリー」という題材を選んだのは正解だったと思う。
ミステリーならば、いつもと違うルパンであっても違和感なく受け入れやすいからだ。
「こういうルパンもありだな」と視聴者に少しでも思ってもらえれば、制作サイドとしては成功なのだろう。
とはいえ、過去作品のオマージュがあったり、ラストをいつものルパンで締めくくったのは、今までどおりのルパン三世を愛する人々へのサービスも忘れてはいないという証拠だろう。
この男、悪人か、ヒーローか
「悪党としての美学」を持つルパン、その顔は時代や作り手によって悪人にもヒーローにもなりうるし、我々を魅了し続ける。
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