ノヴァクは何故一章から登場し続けているのか
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」の第20話「私は、地動説を愛している」の考察です。
ヨレンタ「全歴史が私の背中を押す」
地動説の本が生き残る可能性を少しでも高めるために、ヨレンタは自ら死を選びました。
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その選択に悔いはなかったことはヨレンタの笑顔を見れば明白です。
「正しい選択」をしたヨレンタの思いを尊重したいと思います。
でも…でもなぁ。
子どもを持つ親として言わせてもらえば、信念はおいといてヨレンタには生きててほしかったよ…😭
- ノヴァクはヨレンタに気づいた?
- ヨレンタが託したもの
- 「父型」「母型」「モールド」って何?
- ドゥラカも手紙を誰かに託す?
- ノヴァクは何故一章から登場し続けているのか
今回はヨレンタが託した二つのものについて解説します。
そしてあの爆発の瞬間、ノヴァクはヨレンタに気づいていたのか?
その疑問にお答えしようと思います。
気になった方は是非最後まで読んでいってくださいね😊
前回の考察はこちら👇
このページはアニメ「チ。 ―地球の運動について―」の20話のネタバレを含みます。
20話をご視聴の後で読んでいただると、より楽しめます。
ノヴァクはヨレンタに気づいた?
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馬車から降りたノヴァクは一瞬ヨレンタと視線を交わしています。
この時ノヴァクがヨレンタに気づいたのか、気になった方は多いのではないでしょうか?
私の考えでは、この時点でノヴァクはヨレンタだと思っておらず、段階を踏んでヨレンタだと確信したと思っています。
その根拠について、「ノヴァクの言葉」と「拾ったヨレンタの手」の二つのキーワードを使って解説します。
「今、一瞬…」に続く言葉
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ノヴァク「今、一瞬…」
アッシュ「え?」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第20話「私は、地動説を愛している」
「今、一瞬…」の後には「ヨレンタがいたような気がした」と続くのではないでしょうか?
ノヴァクは何か大切なものを喪ったような精気の抜けた顔で呟いています。
そこには敵を討った達成感といったものは微塵も感じられません。
「目の前で自爆したのは敵ではなく、死んだと思っていた最愛の娘・ヨレンタだったのではないか?」とノヴァクは心のどこかで感じていたと思います。
敵であるはずの手を拾った
ノヴァクにしてみれば、地動説は娘を奪った敵であり、地動説の本を出版しようとする異端解放戦線の組織長は悪の親玉といっても過言ではありません。
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ノヴァク「必ず…敵を討ってくるからな」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第20話「私は、地動説を愛している」
納屋に到着する直前まで、右手にはフベルトのネックレス、左手にはヨレンタの手袋を握りしめて、地動説を潰す意思を明確にしていました。
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しかしノヴァクは敵であるはずの組織長の手を拾い上げてじっと考え込んでいます。
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手を拾い上げたあの瞬間、ノヴァクの脳裏に何度も彼女の手を引いた当時の記憶が蘇ったのではないでしょうか?
子煩悩なノヴァクはよくヨレンタと手を繋いで歩いていました。
「今、一瞬…」と言った時に、「組織長はヨレンタだったのではないか?」と疑念を抱き、手を拾い上げた瞬間「やはりヨレンタだ」と、確信に変わったのではないかと考えています。
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もし自分がヨレンタを死に追いやったと気づいてしまったら、ノヴァクは今後どうなってしまうんでしょうか…?😭
ヨレンタが託したもの
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今回ヨレンタはシュミットとドゥラカにそれぞれあるものを託しました。
それは「本を印刷するための道具」と「手紙」です。
それぞれどんなものなのかを見ていきましょう!
「父型」「母型」「モールド」って何?
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ヨレンタ「ドゥラカさんから聞き取った写本と活字と、父型・母型・モールド。それがあれば、活字が壊れてもあっちで作れる」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第20話「私は、地動説を愛している」
シュミット達はヨレンタに託されものを持って、現在印刷機がある工房に馬車で向かっています。
本を作るのに必要なものは、「印刷機」「写本」「活字」「紙」「インク」です。
では「父型」「母型」「モールド」とは一体何でしょうか?
簡単に言うと、これらは活字を作るための材料です。
父型は母型を作るためのもの
父型とは硬度の高い鋼材で作られた、文字が凸状に彫られた型です。
職人が手彫りで作成し、文字の立体形状を正確に再現しています。
これを使って母型を作ります。
母型はモールドにセットするもの
父型を真鍮に押し付けて作る型です。
父型の方が母型より硬いため、文字が凹んだ形になります。
モールドは鋳造機
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母型をセットして、溶かした金属を流し込む道具です。
これで同じ形の活字をたくさん作ることができます。
冒頭でシュミットが持っていたのがモールドです。
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ヨレンタが「それがあれば、活字が壊れてもあっちで作れる」と言っていたのは、父型・母型・モールドさえあれば活字が作れるからだったんです🤩
ドゥラカは手紙を誰かに託す?
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ヨレンタがドゥラカに託したのは手紙でした。
手紙には「利益の一部をポトツキに譲る」というもの。
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既にポトツキは亡くなっているんですけどね😭
この言葉とこんなに長いつきあいになるなんて、初めの頃は思ってもみなかったなあ…。
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しかしOPでは朝日/夕日をバックに手紙が託されているシーンがあります。
ヨレンタがドゥラカに手紙を託した時少なくとも日は落ちていたので、この手の持ち主は二人ではないはずです。
このことから、ドゥラカもまた誰かに手紙を託すのではないかと思っています。
何故ノヴァクは一章から登場し続けているのか?
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何故ノヴァクは一章から登場し続けているのでしょうか?
今までの考察では、地動説を信じる者たちとの「対比」として異端審問官たちが存在すると思っていました。
ノヴァクが現れるたびに不安になり、ノヴァクに追いつめられて主人公たちが死んでいくのを何度も見てきたことで、「ノヴァクは悪」と思いこんでいました。
しかし今回のヨレンタの「歴史」に関する話を聞いて、少し認識を改めました。
そこでヨレンタが言っていた「歴史」について私が感じたこと、そしてノヴァクが一章からずっと登場しつづける意味について、ヨレンタの言っていた聖書の内容を引用しながらお伝えしてみようと思います。
ヨレンタが引用した聖書の内容について
ヨレンタ「聖書に書いてある」
“神はこの世にある悪を善に変える”
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第20話「私は、地動説を愛している」
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聖書のどこに書いてあるか言ってよ!🤣
安心してください、ちゃんと調べてきました😊
ヨレンタが言っていた内容は『旧約聖書』の創世記50章20節にあります。
あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。
『旧約聖書』創世記 50章 20節
これはヨセフが兄弟たちに言ったセリフです。
ヨセフはヤコブの11番目の子どもとして生まれました。
一体彼はどのような人生を送ったのでしょうか?
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ヨセフの兄弟は父に溺愛されるヨセフを妬み、こともあろうか奴隷として売り飛ばしてしまいます。
しかしヨセフは売り飛ばされた先のエジプトで、ファラオに認められ宰相にまで上り詰めます。
結果としてヨセフはエジプトの人々を飢饉から救うことになりました。
あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。
『旧約聖書』創世記 50章 20節
このヨセフの言葉は、彼が個人的な恨みを超えて兄弟たちを許したことを示しています。
それは同時に、神を信じ「どんな苦難も意味がある」と受け止めるヨセフの深い信仰心を表しているのです。
異端審問官は悪ではない
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さてヨセフの数奇な人生を振り返ると、異端審問官ノヴァクの人生にも違った側面が見えてきます。
ヨレンタ「悪と善。二つの道があるんじゃなく、全ては一つの線の上で繋がっている」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第20話「私は、地動説を愛している」
「善」か「悪」かという二元論で考えた時、多くの異端を処刑台に送ったノヴァクは「悪」といえます。
しかし「歴史」という観点から見ると、ノヴァクの行動もまた神の計画の一部であると言えます。
多くの異端者を葬ってきたノヴァクですが、今となっては地動説の始まりから今までの歴史を知る生き証人です。
地動説を信じる者たちが命懸けで信念を貫く生き様を、一番近くで見てきたノヴァクだからこそ分かる「何か」があるのではないでしょうか?
最終的にノヴァクは、その「何か」で世界をほんの少しだけ良い方向に変える希望になりうるのかもしれませんね😊
それこそがノヴァクが物語を通して登場する意義ではないかと思っています。
20話の感想
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ヨレンタの「今を生きる人には過去の全てが含まれてる」には、さまざまな思いを巡らせることができます。
ヨレンタからは過去の主人公たちの面影を感じることができるからです。
ラファウ「でもそんなのを愛とも言えそうです」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第3話「僕は、地動説を信じています」
例えばヨレンタの「地動説を愛してる」はラファウが使った「愛」と同じ表現です。
またヨレンタはラファウと同じく地動説を守るため自ら死を選んでいます。
仲間を逃がして一人納屋に残ったのはオクジーの行動と似ていますよね。
きっとヨレンタは信じていたんだと思います。
自分の死にも、父が生きることにも意味があると。
だからこそ自爆の際にも、ノヴァクや異端審問官たちを巻き添えにはしなかったのではないでしょうか?
ノヴァク「正気じゃない。訳の分からんものに熱中して命すら投げる。そんな状態を狂気だとは思わないのか?」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第3話「僕は、地動説を信じています」
かつてのノヴァクはラファウが死を選んだことを理解できませんでした。
信念を貫くために命を懸ける人々の気持ちが分からなかったんです。
ヨレンタの死を通して、ノヴァクはようやく彼らの思いを知ることができるのではないでしょうか?
地動説の生き証人となったノヴァクの今後にも注目していきたいですね!
ドゥラカも変わりつつある?
ドゥラカは父が死んだことにきっかけに神を信じていませんでした。
しかしヨレンタが今回何度も「神」と口にしたことで、彼女の認識も少しずつ変わっている気がします。
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蛇足になりますが、ドゥラカは父の形見である布とお金をずっと大切にしていたんですね😲
ドゥラカが首に巻いている布はお父さんの形見ということに今まで気づいていませんでした🤣
絨毯にして寝転がるくらいお金を持っていたのに、形見を肌身離さず持っていたということは、やはり父の存在はドゥラカにとって特別なものだったのでしょう。
神を信じず、お金を稼ぐという信念を持った彼女が、今後どう化けて地動説に対してどんなねじれを引き起こすのか、こちらも楽しみです!
次回の考察はこちら👇
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