シュミットがコインをひっくり返した理由
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」の第21話「時代は変わる」の考察です。
ドゥラカ「あなたたちがヨレンタさんの計画を引き継ぐなら、私はヨレンタさんの思いを引き継ぐ」
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今までヨレンタたちの計画に関して無関係って態度だったのに、ヨレンタの死以降、ドゥラカ変わりましたね~😉
それは命と引き換えにしてでも本を出版しようとした、ヨレンタの覚悟を目の当たりにしたからなのかもしれません。
- ドゥラカが説得しようとしているのは誰?
- シュミットがコインをひっくり返した理由
- 活版印刷の工程
- 15世紀ポーランドの貨幣事情について
今回はドゥラカが説得しようとしている「彼」とは誰なのか、神の決断を何よりも重んじていたシュミットが何故コインをひっくり返したのかを解説していきます。
おまけでは活版印刷の工程や15世紀ポーランドの貨幣事情についてお話しています。
気になった方は是非最後まで読んでいってください😉
前回の考察はこちら👇
このページはアニメ「チ。 ―地球の運動について―」の21話のネタバレを含みます。
21話をご視聴の後で読んでいただると、より楽しめます。
ドゥラカが説得しようとしているのは誰?
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ドゥラカ「彼を説得できる」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
フライの通報により、あと数十分で騎士団が到着するという絶体絶命の状態で、ドゥラカはある提案をします。
みんなで協力して私を逃がすって選択
シュミットやレヴァンドロフスキはまだしも、他の闘士からすれば隊長が連れてきた素性もよく分からない少女を命懸けで逃がすという作戦を受け入れられるはずがありません。
それでも最終的にこの作戦に決まったのは、シュミットが命令したというのもありますが、わずかながらドゥラカの提案に希望を見出したからだと思います。
それでは一体ドゥラカは誰を説得しようとしているのでしょうか?
候補の共通点は「騎士団に命令できる立場にある人物」です。
以下の項目で二人の候補を挙げ、最終的に一人に絞ろうと思います。
ノヴァク
異端解放戦線は追われる身ですから、騎士団の襲撃に備えてアジトを転々としていては、いつまで経っても出版できません。
印刷機を運ぶにはそれなりの大きさの馬車も必要になりますし、騎士団の目をかいくぐるのは至難の業です。
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そこで説得したいのがノヴァクです。
騎士団を実際に指揮しているのはノヴァクとアッシュですしね。
彼らを説得すれば騎士団が引きあげてくれる可能性があります。
特にノヴァクの場合は、異端解放戦線のリーダーがヨレンタであることを伝えれば、こちらの味方になってくれるかもしれません。
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25年前、アントニはヨレンタを拷問し死を偽装した張本人なので、そのことをノヴァクが知れば教会正統派に剣を向けることも十分あり得ます。
ただしこの候補の場合一番の障害になるのが、「ドゥラカはノヴァクの顔を知らない」ということなんですよね😓
これでは説得しに行くのがドゥラカである必要はありません。
となると、候補の条件にもう一つ加える必要があります。
- 騎士団に命令できる人物
- 異端解放戦線の闘士たちは知らないが、ドゥラカが知る人物
そうなると、候補は一人に絞られるんですよね…。
アントニ
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その候補とはなんと、司教アントニです!
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まさかのアントニ!😱
お前の…番なのか?
(クラボフスキ風に)
司教であるアントニなら騎士団に命令できますし、ドゥラカとは顔見知りですしね。
ドゥラカ「どこの教会なんですか?」
アントニ「ここから南西に少し下ったところの…」
ドゥラカ「ああ。あの街ですか」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第18話「情報を解放する」
アントニがいる教会についても、ドゥラカは本人から場所を聞いているので、「馬で数時間で行ける」とドゥラカが言っていたことにも矛盾しませんね。
ここでドゥラカとアントニの出会いについて軽くおさらいしてみましょう!😉
ドゥラカとアントニの出会い
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アントニ「この男に聞いたぞ。お前、少しは賢いんだって?」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第18話「情報を解放する」
叔父ドゥルーヴの裏切りによって、ドゥラカは騎士団に売られそうになったことがありました。
結局シュミットたちの襲撃でドゥラカは事なきを得たのですが…。
襲撃される前、ドゥラカとアントニは話をしています。
アントニ「この先教会の権威はどうなると思う?」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第18話「情報を解放する」
アントニはドゥラカの聡明さに気づき、教会の権威が揺らいだ時にどう防げばいいのかをドゥラカに問うています。
ドゥラカもまた、アントニが今後教会がどうあるべきなのか考えあぐねていると感じたのでしょう。
ドゥラカ「時代は変わる。いや、変わらざるをえない。私ならそこを突ける」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
長く続いた教会正統派はいびつになり、権威も揺らぎつつあります。
聖職売買の横行や免罪符販売を許可するといった教会のやり方に対し、当時の人々は教会に対して強い不満を持っていたと思われます。
その大きな流れを防ぐことはできないでしょう。
次の時代を見極め教会も生存戦略を練る時期だとドゥラカが説けば、アントニも異端弾圧を緩め教会内部の改革を優先するかもしれません。
実際の歴史でもルターの宗教改革を経て、カトリック教会は生存戦略として、司祭の質向上や海外への布教といった改革に乗り出しています。
この地道な活動が実を結び、現在も様々な課題に直面してはいるものの、カトリック教会は世界全体で約12億人の信者を維持しているのです。
余談になりますが、中世のポーランドは「異端者の避難所」と言われるほど宗教に寛容な国でした。
アニメではノヴァクが地動説を絶賛弾圧していますが、今後アントニの決断で異端者に優しい国へと変わっていくのかもしれませんね😊
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もしアントニが地動説を弾圧しないと約束してくれたら、私もアントニを多少は認めてやってもいいよ!
*基本ゆんこはアントニに対して辛口です。
何故シュミットはコインをひっくり返したのか
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シュミット「君が逃げろ。我々が守る」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
一度は表になったコインをシュミットが返して、全員でドゥラカを逃がすことになりました!
シュミットの決断はもちろん、その後の「隊長。それは提案ですか?」「命令だ」「了解」のやりとりもかっこよかったですね…😭
ここでは、シュミットが「ドゥラカを逃がす」という決断に至った理由について、二つ解説していきます。
フライの裏切り
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フライ「よかった。じゃあこれでちゃんと一巻の終わりだ」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
一つ目の理由はフライの裏切りです。
シュミットはフライと行動を共にしていながら、フライの裏切りに気づかず計画は順調だと思い込んでいました。
フライが怪しい行動は19話から始まっています。
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印刷工房に向かう前に「では次こそがこの最重要任務の最終目的地なのですね」「それはどこで?」など、シュミットに対して念押ししていましたね。
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20話においても、フライには馬車内で活字を壊すチャンスがありました。
フライは計画を遅らせる工作をしたり、街で教会に通報したりと、異端解放戦線を根絶やしにするタイミングを虎視眈々と狙っていたことが分かります。
フライ「信念のため必要な犠牲だ。貴様らを消す。それが物心ついた時から俺の信念だ。迷いなどない」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
「神の解釈の違いで起こった争いで家族を失った」「迷いのない信念を持っている」という点で、シュミットとフライには共通点がありました。
だからこそシュミットはフライの心の奥底に燻る異端への憎しみに気づけなかったのです。
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「信念はすぐ呪いに化ける」「迷って」
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ここにきてヨレンタの言葉が刺さってきますね…。
シュミットは自身の「迷いのない信念」に限界を感じたのだと思います。
ドゥラカの知性
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二つ目の理由はドゥラカの知性です。
フライとは対照的に、ドゥラカは迷いながらも自分の信念をあっさり捨ててしまいます。
自身の信念の象徴とも言える父の形見がそうです。
またコイントスで決めるというのも、「私はこんな偶然に何も決めさせない」と言っていたドゥラカの言葉に反していました。
自分の信念の捨ててでもヨレンタの感動を引き継ごうとするドゥラカの姿に、シュミットは初めて「迷った」のだと思います。
シュミット「待て。君はこの方法で決めていいのか?」
ドゥラカ「…はい」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第21話「時代は変わる」
この迷いはドゥラカがコイントスする前のシュミットの言葉にも表れています。
またどんな非常事態に対しても、柔軟に思考しその場で最適解を導き出すドゥラカに希望を見出したのではないでしょうか。
ドゥルーヴ「考えろ。その過程に知性が宿る」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第17話「この本で大稼ぎできる、かも」
その希望にはシュミットが今まで信じてこなかった「人の知性」が宿っています。
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シュミットは初めて「人の知性」を信じてみたくなったのだと思います!
だからこそ神に委ねるのではなく、自ら運命を選択することを選んだのでしょう😊
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ここでシュミットもヨレンタの思いを引き継いだといえるのではないでしょうか?
感動を守るため地獄へ行こうとするシュミット達の姿に震えました…!😭
21話の感想
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順調だったはずの計画がフライの裏切りによって瓦解してしまったわけですが、フライのことを単純に悪人だとは思えないんですよね。
彼の既存概念を壊すような人の存在がいれば…、オクジーの本を最後まで読んでいれば…と、彼の運命を変える何かがあればと考えずにはいられない、哀しい人物でした。
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フライの叔父「時間をあげてるんだ。自分の浅はかさを理解する時間。絶望する時間。そして改心する時間。まだ間に合う。自分は間違っていたと言え。教会正統派は間違っていたと言え!」
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」第16話「行動を開始する」
最後のセリフが違うだけで、自分の両親を殺した叔父と全く同じことを言っていることに、フライは気づいていたんでしょうか?
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きっと気づいていなかったんだろうな…。
これが呪いなんでしょうか😭
裏切り、別れ、そして迫りくる死に、感傷に浸る暇もない怒涛の展開はこのアニメのすごいところかもしれません。
以下おまけです!
活版印刷の工程
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今回実際印刷機で印刷する様子が描かれましたね😊
ちなみにJOLENTA WYDWCAは「発行人 ヨレンタ」という意味で、WYDWCAはヨレンタの名字ではありません😂
これはオクジーの本なので厳密には違うけど、「自分の名前で論文を出してみたい」っていう夢が叶ったのかな…と思っちゃいますね。
ザックリではありますが、グーテンベルクの活版印刷について工程を説明します。
印刷まで
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①母型をモールドにセットし、溶かした鉛を流し込む
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②鉛が冷えたら完成した活字を取り出す
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③組板に活字を配置する
そしていよいよ印刷機を使っていくわけですが、ここからは実際に見た方が分かりやすいと思ったので、動画を紹介させていただきます。
アニメではカットされていた余白の工程が分かるはずです😊
いかがでしたか?
500年以上前の技術ですが、この技術の積み重ねがあって現代の印刷技術があると思うと、先人の発明に頭を垂れずにはいられません!
15世紀ヨーロッパの貨幣事情について
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ドゥラカは活字を作るため、父の形見の鉛銭を差し出しましたが、実際の15世紀ポーランドにおいては自国通貨ではなくプラハ・グロシュといった外国通貨に依存していました。
そもそも鉛は軟らかく耐久性に欠け、貨幣として不向きなうえ、金や銀といった貴金属に比べて価値が低いということもあって、ほとんど貨幣として使われることはなかったと思われます。
そのためドゥラカが持っていた鉛銭は、実際には存在しない架空のものでしょう。
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さて21話ではノヴァクが一切出てきませんでした。
組織長がヨレンタであることに気づいたのかどうか、答えが分かると思っていたのですが、次回以降に持ち越しみたいですね。
異端解放戦線を追いつめる騎士団を指揮するのはやはりノヴァクなのでしょうか?
地動説を憎み続ける彼と和解する日はくるんでしょうか?
そして「地球の運動について」は無事出版されるのでしょうか?
今後の展開も見逃せませんね🎵
次回の更新は2月25日(日)の予定です。
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