二重の周転円って何のこと?
アニメ「チ。 ―地球の運動について―」の第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」の考察です。
ピャスト「しかし例え誤りでも、何かを書き留めたことは歴史にとって無意味ではない」
ピャストのセリフは、フベルトの「不正解は無意味を意味しない」と同じ意味ですよね。
例え自分たちが一生を捧げた宇宙の形が間違いだったと証明するものだとしても、膨大で緻密な観測記録は未来に繋がる何かになるのでしょう。
ヨレンタ「文字はまるで奇蹟ですよ」
ピャスト伯たちの無謀な挑戦が無駄ではなかったということが、ヨレンタが言っていた「奇蹟」という言葉で表現されている気がします!
さて今回は若かりしピャスト伯が言っていた二重の周転円が何なのか、プトレマイオスの天動説の歴史を紐解きながら解説していきます。
そして、物語の鍵となった金星の満ち欠けのお話や、実際に肉眼で満ちた金星を見ることが可能なのかについてもお話していこうと思います。
例によって、オクジーでも分かるように簡単に解説しようと思っていますので、是非最後まで読んでいってくださいね😉
前回の考察はこちら👇
このページはアニメ「チ。 ―地球の運動について―」の9話のネタバレを含みます。
9話をご視聴の後で読んでいただると、より楽しめます。
二重の周転円って何のこと?
教授「私が考案し、修正してきた宇宙だ」
ピャスト「二重の周転円?すごい…。精度も申し分ないし、等速円運動も達成してる」
「チ。 ―地球の運動について―」第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」
二重とかいう前に、そもそも周転円なんて聞いたことないので、そこから説明お願いします…😖
え、周転円の話はバデーニさんがオクジーくんに熱弁してたような…。
ちゃんと覚えてますよね?😅
端的に言うと…アリストテレスの同心球理論とプトレマイオスの離心円・周転円理論の乖離と、それぞれの理論の欠点の指摘。さらに今用いられている全ての理論において、宇宙全体とその部分に均衡がなく、それぞれ独立した計算で記述され体系化されていないことに対する異議。(*6話より引用)
ああ…もちろん覚えてました!
(目が泳いでるなぁ…)
…オクジー君、今は忌憚なき本音を言ってくれたまえ。
正直マジで早口すぎて、「全然端的じゃない!」っていうか…。
正直でよろしい🤣
でははじめに、プトレマイオスの宇宙モデルを見てみましょう!
誘導円と周転円
プトレマイオスの宇宙モデルでは、惑星や太陽がどのように動くかを説明するために、「誘導円」と「周転円」という大小2つの円を使いました。
何で大きさが違う円があるんですか?
俺には難しすぎるんですけど…。
2つの円がないと、惑星が逆行する理由を説明できなかったんです😅
さらにプトレマイオスは「エカント」という架空の点を考えました。
エカントは、逆行の際に惑星の速さが変わる理由を説明するために使われたんです。
惑星の速さが変わる?
グラスさんが火星の観測をしてた時に言ってたじゃないですか。
毎日…毎日2年間動いていたんだ。それがここ最近移動速度が随分遅くなっていたんだが…ついに今日火星が止まった。(*4話より引用)
あぁ。逆行の時に火星の動きが遅くなっていたアレですね。
プトレマイオスの宇宙モデルは、当時の観測精度で言えば十分なものでした。
長年天動説が信じられていたのも、大地が動いているって感覚が人々に受け入れられづらいのも勿論ありますが、それだけ精度が高かったからなんです。
でもよく見たら、プトレマイオスの宇宙モデルって地球が中心じゃないですよね?
よく気づきましたね~😍
これはアリストテレスの「地球が宇宙の中心で、天体は円運動をしている」という考えとは完全には一致していなかったので、後世の天文学者たちは、プトレマイオスのモデルを改良しようと考えたんです。
その改良モデルの一つが、教授の考えた修正宇宙で使われた「二重の周転円」ということですか?
そのとおり!
この二重の周転円は14世紀のムスリムの天文学者・イブン・シャーティルが考えたモデルによく似ていますね。
これは周転円が二つに増えていますが、エカントがなくなって地球を中心とした美しい宇宙モデルとなっています。
何故教授は完璧な宇宙を完成させられなかったのか?
教授「だが…だが…!完成しないのだ、いくらやっても!」
「チ。 ―地球の運動について―」第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」
教授やピャスト伯は宇宙を完成させられなかったんだから、結局天動説は間違ってたってことですよね?
そんな単純な話じゃないです😅
アストロラーベといった古い観測技術では、精度の高いデータを得ることはできませんでした。
肉眼だと天候や大気の影響を受けやすいですしね。
望遠鏡とかないですし…。
ボーエンキョー?
ものすごく遠くのものを拡大して見る道具と思っていただければw
のちに地動説を提唱するコペルニクスも、当初はプトレマイオスの天動説モデルを基にしていたんですよ?
じゃあ、「天動説が間違ってて、地動説が正しい!」って決めつけるのもおかしな話なんですね。
前提そのものは全く違いますが、2000年の積み重ねの先に、地動説が確立されたというのが正しいかもしれませんね😊
満ちた金星が地動説の証明になるの?
ヨレンタ「天動説では地球が中心だから、当然金星も地球の周りをまわってます。ということは、太陽に照らされる方向もある程度決まっていて、金星は常に欠けて見えるんです」
「チ。 ―地球の運動について―」第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」
図にあるように、プトレマイオスの宇宙モデルだと、金星は三日月か半円でしか見えません。
地球から満ちた金星を見るには、金星が太陽を挟んで向こう側にないといけないので、天動説ではありえないということになります。
金星の満ち欠けは、コペルニクスの地動説を支持する重要な証拠となりました。
金星が太陽の周りを公転しているために見える現象だからです。
これにより、地球中心の天動説から太陽中心の地動説へと徐々に移行していくことになります。
人類史上、初めて金星の満ち欠けを発見したのは誰?
オクジー「…満ちてる」
「チ。 ―地球の運動について―」第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」
あ、これは分かります。
人類で初めて満ちた金星を観測したのは俺ですよね😊
あ~…すいません😅
ガリレオ・ガリレイです。
1609年、ガリレオは望遠鏡を使った天体観測を行いました。
そして翌年、金星の満ち欠けと見かけの大きさが変わることを発見しています。
誰ですか!?
何で俺じゃないんですか!
満ちた金星を肉眼で確認できる?
そもそも満ちた金星を肉眼で確認するのはかなり難しいんですよ。
金星が太陽を挟んで向かい側にある時満ちて見えるんで非常に小さいんです。
中秋の名月ってありますよね?
満ちた金星の大きさは中秋の名月のおよそ1/186です。
…満ちてる。
オクジー君の視力はマサイ族もびっくりですよ😂
満ちた金星を見るには視力10.0以上は必要になるかもしれませんねw
俺、ほんとに満ちた金星を見たんです…😭
歴史がオクジーくんを選んだと思えばいいじゃないですか!
9話の感想
オクジー「期待してください」
オクジーくん、変わったよね~!
かっこよくなった気がします😆
思い出される過去のオクジー発言というと…。
「期待したら裏切られるのがオチ」
「この世は終わってる」
「怖いんでいいです」
「期待されても困る!」
こういう後ろ向きな発言が多かったですからね😅
ここ数日の出来事で、この世に希望を感じる心を取り戻すことができたのかもしれません。
以下は気になることをピックアップしています!
地動説の完成にもう一つ必要なもの
ラファウ(地動説…やはり一筋縄ではいかないな。まだ軌道が完璧な真円にはほど遠い。これじゃあまだ天動説の方が正確…)
「チ。 ―地球の運動について―」第3話「僕は、地動説を信じてます」
今回満ちた金星が見えたことで、もう地動説完成間近じゃん?と思われた方もいるかもしれませんが、そう甘い話ではありません。
ラファウは惑星の軌道が完璧な真円にはほど遠いことを問題視していました。
これは周回軌道の形が真円ではなく楕円だからです。
この答えに辿りつくには正確な観測記録が必要になります。
ピャスト伯の驚異的な資料が突破口となるのか…?
ピャスト伯は地動説を完成させた?
ピャスト伯が死ぬ直前に書き留めていた内容も気になりますね。
既にピャスト伯も地動説を証明できるだけの資料と知識は持っていると考えるならば、あの時書いていたのは地動説の証明であり、最期の「ようやくお話しできます」というセリフも、自ら地動説を完成させたということだったのかもしれませんね。
バデーニに不穏なフラグ?
バデーニ「それと後日我々が捕まったとしても、君は無関係を貫け。それが君のためにも地動説のためにもなる」
「チ。 ―地球の運動について―」第9話「きっとそれが、何かを知るということだ」
今までのバデーニとはちょっと違うなと思ったセリフです。
少し前のバデーニなら、むしろヨレンタに罪をなすりつけようとしていましたし、「地動説のためにもなる」なんて言わなかった気がします。
バデーニは自分を特別にする瞬間を待ち望んでいましたもんね😅
何だかんだでバデーニも変わりつつあるのかな…。
それだけに「後日我々が捕まったとしても」ってくだりがちょっと不穏ですね~…。
ヨレンタ父であるノヴァクがあれから不気味なほど登場しないことや、バデーニが村に資料を持ち込んで研究することで、密告される危険性もあると思います。
ノヴァク「もし異端研究が行われているのを知っていながら密告しなかった場合、あなたは終わりだ」
「チ。 ―地球の運動について―」第3話「僕は、地動説を信じてます」
異端研究を知りながらかくまった協力者は重罪、密告しなくても罪に問われるようなので、バデーニは相当周囲に気を張りながら作業する必要があると思います。
ノヴァクのしつこさも一筋縄ではいかないので、慎重に研究してほしいですね😅
さて、ここまで読んでいただきありがとうございました!
「金星の話にするか~!」と思っていたら、ついつい古典天文学の方まで手を伸ばしてしまい、膨大な資料とにらめっこすることになってしまいました。
プトレマイオスの宇宙モデルで火星の軌道を図にした場合と、現代天文学の理論で計算した火星の運動を比較すると、驚くほどに誤差がなかったんです。
宇宙の形を誤認しているにもかかわらず、複雑な計算は必要ではあるものの、火星の軌道をかなり正確に導き出していたんですよね。
ピャスト伯たちのように宇宙を完成させようと一生を捧げた人たちがたくさんいたからこそ、地動説が成立したんだな~と思うと、かつての偉人たちの知性と熱意に脱帽するしかありませんでした。
「天動説は間違ってて地動説が正しい」くらいの浅い知識しか持ってなくて、申し訳ない気持ちになったくらいです😓
長い歴史がある天文学…知れば知るほど面白いですね🎵
アニメを見る時はそんな知識がなくても十分楽しめますが、やはり知っていればより深く作品を知ることができて楽しいです!
次回以降の展開も楽しみにしたいと思います😍
次回の考察はこちら👇
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