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【考察】平家物語 #11 灌頂巻を忠実に再現した圧巻の最終回!

平家物語

新たな平家物語が生まれ、語り継がれていく名作へ。

ついにアニメ「平家物語」の考察も最終回です。

平家滅亡の舞台となる壇ノ浦までやってきました。

追いつめられた平家一門が次々入水していく場面や、一人生き残り泣き叫ぶ徳子には涙なしに見れません。

終盤では寂光院で平家一門の菩提を弔っていた徳子のもとに後白河法皇が訪ねてきます。

徳子がこの世を去る瞬間は、原作を忠実に再現していました。

圧巻のラストを解説していきます!

この記事で分かること
  • 壇ノ浦合戦
  • 義経と景時の確執
  • 知盛という男
  • 徳子を引き戻したもの
  • 灌頂巻

前回の考察はこちら。

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壇ノ浦合戦

いくさは今日ぞ限り、者ども、少しも退く心あるべからず。天竺・震旦にも日本我朝にもならびなき名将勇士といへども、運命尽きぬれば力及ばず。されども名こそ惜しけれ。東国の者どもに弱気見ゆな。いつのために命をば惜しむべき。是のみぞ思ふ事。

『平家物語 巻第十一』壇ノ浦合戦

知盛「戦は今日を限り!者ども退く心を持つな。命を惜しむな。名を惜しめ!」

数は源氏の軍が勝っていましたが、潮の流れが激しい海峡においては、水軍の運用に長けた平家軍に分がありました。

さらに平家軍には作戦がありました。

大きな唐船に帝や将軍がいると思わせておいて、兵を潜ませておき、源氏の船がやってきたところを包囲するというものです。

しかしイルカの大群が現れて潮の流れが変わると、源氏が攻勢に転じます。

また阿波重能の裏切りによって、小舟の方に帝がいることがバレてしまいます。

*アニメでは不利な戦況を打開しようと、義経が漕ぎ手を射るように言いますが、非戦闘員である漕ぎ手を殺すのは戦の作法に反する行為です。

原作の『平家物語』でも漕ぎ手が殺されるシーンはありますが、先帝が身投げをする寸前の大勢決した後の話です。

義経と景時の対立

壇ノ浦の戦いを制した源氏側も一枚岩ではありませんでした。

この合戦では、源義経と梶原景時かじわらかげときがどちらが先陣を切るかで揉めています。

梶原、先陣を所望しかねて、「天性この殿は、侍の主にはなりがたし」とぞつぶやきける。
判官、「日本一のをこの者かな」とて、太刀の柄に手をかけ給ふ。

梶原は先陣を希望しづらくなり、「生まれつきこの殿は、侍の主君にはなりがたい」とつぶやいた。
義経は「日本一の愚か者だな」と言って、太刀の柄に手をおかけなさる。

『平家物語 巻第十一』壇ノ浦合戦

斬りあい寸前までいってしまうのですが、周りの者が諫めて事なきを得ます。

この一件で景時は義経を憎むようになり、「梶原景時の讒言ざんげんへと繋がっていきます。

ゆんこ
ゆんこ

この二人は壇ノ浦合戦以前にも「逆櫓さかろ論争」や「六日むいか菖蒲あやめ」といったエピソードで揉めていますから、「鎌倉殿の13人」をご覧の方は是非チェックしてみてください!

見るべきものは全て見た

知盛は一ノ谷の戦いで、息子の知章ともあきらを亡くしています。

義経の奇襲で総崩れとなり、知盛たちが敗走していると、児玉党という武士団に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥ります。

敵の大将が知盛に襲いかかるところを、知章が割って入り大将を討ち取りますが、その後知章は討ち死にしてしまいます。

いかなれば子はあつて、親を討たせじと、敵に組むを見ながら、いかなる親なれば、子の討たるるを助けずして、これまでは逃れ参つて候ふやらん。

どういうわけで子があって、親を討たせまいと敵と組むのを見ながら、どのような親ならば、子が討たれるのを助けないでこのように逃げてまいるのでしょうか。

『平家物語 巻第九』知章最期

自分を助けようとして死んだ知章のことを思い、知盛はさめざめと泣いたそうです。

都を落ち、一門の者が次々に死んでいき、息子も亡くし、最後の戦いに臨む知盛はどんな心境だったのでしょうか。

「見るべきほどのことをば見つ」

『平家物語 巻第十一』内侍所都入

「見るべきものは全て見た」

もはやこれまでと、一門の入水を見届けると、知盛も飛び込みます。

アニメでは碇を持っていましたね。(『平家物語』では鎧を2領着込んでいます)

入水の時は浮かんでこれないように重しになるようなものを身につけてから飛び込むのですが、宗盛は泳ぎが得意だったので浮かんでしまい、生け捕りにされています。

知盛の言葉に呼応するように、びわの目から光が失われていくのが印象的でした。

こうして、びわは盲目の琵琶法師になったんですね。

徳子を引き戻したもの

徳子は髪が熊手に引っかかって助かります。

「私も行かせて!」と泣き叫ぶ徳子を引き戻したのは、びわの言葉でした。

この目は未来さきが見える。徳子はこの先もみなのために生きていく。
この目は重盛からもろうた目。みなが見えるぞ、徳子。帝は幼き手を合わせておるぞ。

「ただ見たことを語る」と言っていたびわが、未来さきのことを徳子に語りました。

びわが未来さきのことを自分から言ったのは、重盛と徳子だけです。

それだけびわにとって、重盛と徳子が特別な存在だったということかもしれませんね。

安徳天皇が入水したシーンの現代語訳はこちらの記事をご覧ください。

灌頂巻

『平家物語』は十二巻本+灌頂巻かんじょうのまきで構成されています。

灌頂巻は徳子の後日談となっていて、『平家物語』全体の幕引きにあたる部分です。

しば漬けは徳子に献上された漬物で徳子が名づけ親。

壇ノ浦の戦いで生き残った徳子は京へ送還されて出家、大原寂光院で安徳天皇と一門の菩提を弔う日々を送っていました。

そこへ後白河法皇が訪ねてきます。

六道之沙汰

後白河法皇に、徳子は生きながらにして六道を見たと言います。

六道・・人が死んだら生まれ変わる六つの世界のこと。天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道

「栄華の中に身を置いてまいりました」(天道)
「都を落ち」(人間道)
「一門は戦に明け暮れ」(修羅道)
「海の上では水を飲むことすらできず」(餓鬼道)
「わが子の命が消えていくのさえこの目で
・・(地獄道)

かくて寄る方なかりしは、五衰必滅の悲しみとこそおぼえさぶらひしか。人間の事は愛別離苦、怨憎会苦、共に我身にしられてさぶらふ。四苦八苦一として残る所さぶらはず。

このように頼りない状態は、五衰必滅の悲しみと思いました。人間界のことは愛別離苦、怨憎会苦と、どれも自分のことのように知っています。四苦八苦のうち一つも残したところはありません。

五衰必滅・・天人の死に際して現れるという五種の衰えの相
愛別離苦・・愛する者と別れる苦しみ
怨憎会苦・・うらみ憎む相手に会う苦しみ
四苦八苦・・人間のあらゆる苦しみ

『平家物語 潅頂巻』六道之沙汰

徳子「人の世にある苦しみは、全て自分のこととして思い知らされました。一つとして分からぬ苦しみはございませぬ」

六道の中の「畜生道」だけがありませんが、徳子が見たという竜宮城の夢がそれにあたります。

都を出て後、かかる所はいまだ見ざりつるに、「是はいづくぞ」ととひ侍ひしかば、弐位の尼と覚えて、「竜宮城」と答へ侍ひし時、「めでたかりける所かな。是には苦はなきか」ととひさぶらひしかば、「竜畜経のなかに見えて侍らふ。よくよく後世をとぶらひ給へ」と申すと覚えて夢さめぬ。

都を出てからというもの、こんなに美しい場所を見たことがありません。「ここは何という場所ですか」と問えば、二位の尼(時子)は「竜宮城というところです」と答えました。「素晴らしいところですね。ここには苦しみはございませんか」と聞くと、尼が、「竜畜経をごらんなさい。後世を思って入念に供養してください」と答えたかと思うと、夢から覚めました。

竜畜経・・架空の教典。

『平家物語 潅頂巻』六道之沙汰
ゆんこ
ゆんこ

竜宮城には今まで亡くなった一門がいて、無間地獄に落ちたはずの清盛もいますね!

女院死去

全てを奪われたはずの徳子の笑顔に菩薩を見たのでしょうか、後白河法皇は「どうしたら苦しみを越えられるのか」と尋ねます。

徳子「ただ・・ただこうしてみなを、愛する者を思い、そのご冥福を祈っているのでございます。
ただそれが・・私にできること」

全てを見届けたびわもまた、一門の為に祈り、人々に語り継いでいきます。

徳子「その中で我ら一門は生き続けましょう」

その始まりは・・「祇園精舎の鐘の声」

「祇園精舎の鐘の声」から始まる祈りの物語を、多くの者が語り継ぐ。

そして、祈り続ける日々を送っていた徳子にもとうとう最期の時が訪れます。

臨終行儀:死に際した者が極楽浄土へ行けるようにと、仏像の手に結んだ五色の糸を手にしながら念仏を唱える。

かくて年月をすごさせ給ふ程に、女院御心地例ならずわたらせ給ひしかば、中尊の御手の五色の糸をひかへつつ、「南無西方極楽世界教主弥陀如来、かならず引摂し給へ」とて、御念仏ありしかば、大納言佐局だいなごんのすけのつぼね阿波内侍あわのないじ、左右に候ひて、いまをかぎりのかなしさに、声も惜しまずなき叫ぶ。御念仏の声やうやう弱らせましましければ、西に紫雲たなびき、異香室にみち、音楽そらにきこゆ。

こうして年月を過ごしなさっているうちに、女院は体調崩されたので、阿弥陀如来の手にかけた五色の色の糸を持ちながら、「西方極楽世界にいらっしゃる阿弥陀如来様、必ず極楽浄土へとお導きください」と、念仏を唱えられたので、大納言佐局と阿波内侍は女院徳子の左右にひかえて、最期を見届ける悲しさに、声も惜しまず泣き叫んだ。念仏の声がしだいに弱りなさったところ、西の方に紫の雲がたなびいて、すばらしい香りが部屋に満ちて、音楽が空中に聞こえた。

大納言佐局(藤原輔子)・・平重衡の妻。
阿波内侍・・藤原通憲(信西)の娘又は孫と言われ、崇徳院の寵愛を受けた。

『平家物語 灌頂巻』女院死去
徳子を見送ったのが、びわの音であればいいと思ってしまうラストだった。

徳子の祈りが成就したことを示すように、徳子の手に止まっていた揚羽蝶が飛んでいきます。

蝶は平家の家紋であり、輪廻転生や不滅を表すシンボルです。

驕り高ぶった平家は儚くも滅びを迎えましたが、遺された者の祈りによって再生し、多くの人々に語り継がれることで、永遠に生き続けるのでしょう。

「明日、明後日、これから、この先、ずっと先、もっと先」
「いつか」「また今度」

11話の感想

ゆんこ
ゆんこ

文句なしの大傑作でした!!

11話を見終わった後、名前がつけられない感情が溢れました。

灌頂巻の部分は何度も見たのですが、見るたびに泣いてしまいます。

びわの力強い音に心が揺さぶられます。

多くの人によって「祇園精舎の鐘の声・・」と語られるシーンも良かったですね。

敦盛の首を斬った後に出家した熊谷直実、吉野で生き別れた義経を想い舞った静御前、そして資盛!

資盛が生きていたのは意外ですが、資盛には奄美群島に落ち延びたという伝承が残っているので、これが採用されたのでしょう。

びわが見て聞いたものをただ語ったこの物語は、アニメという形で私たちに伝えられました。

この傑作を見て多くの人が儚く散っていった平家の人々に思いを馳せたと思います。

これはまさに令和版平家物語と言ってもいいのではないでしょうか?😂

栄華を誇った平家が滅んだように、悪い時代も続かない、そんな歌詞で平家物語を彩ってくれたオープニング主題歌も最高でした😭

いつか笑ってまた会おうよ

永遠なんてないとしたら この最悪な時代もきっと続かないでしょう

アニメ「平家物語」オープニング主題歌「光るとき」

余談ですが、私が『平家物語』に出会ったのは、恐らく皆さんと同じで学校の授業です。

七五調の美しい響きに魅せられて、私は「よし、全部暗唱できるようになろう!」と思い、図書館でさっそく『平家物語』を探しに行ったのですが、鈍器になりそうな分厚い本が出てきてびっくりした記憶があります。

ゆんこ
ゆんこ

今でも、祇園精舎の段の「心も詞も及ばれね」までは暗唱できるんですよ🤤

すぐ挫折してしまったのもいい思い出ですが、読み物としても非常にすぐれていることが分かります。

細かい単語は分からなくても、アニメ「平家物語」を観た時と同じ感動を味わえるので、是非これを機に原作『平家物語』も読んでみてください!

見放題対象のVOD一覧

「アニメ平家物語はどこで見れる?」という人のために、見放題対象のVODを紹介します。

平家物語の配信情報は2023年5月29日時点のものです。
配信が終了している、または見放題が終了している可能性がありますので、現在の配信状況については各ホームページをご確認ください。

「平家物語」はFODにて先行全話独占配信中です。

全話を一気見したい方におすすめ!
初回2週間の無料トライアルを利用すれば、全話無料で視聴できます。

https://fod.fujitv.co.jp/title/5h19/

さらに以下のVODで平家物語が見放題対象となっています(各話配信方式)

VODによって配信日時が若干違うので、ご注意ください。

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