戦いに身を投じる者、恨む者、そして許す者。
アニメ「平家物語」の第5話「橋合戦」の考察ページです。
「治承三年の政変」「以仁王の乱」「高倉天皇の人柄と女性関係」を掲載しています。
小ネタは「木村昴が木村昴を討伐に行く?」です。
4話で重盛が病死し、清盛の独裁を諫める人間がいなくなってしまいました。
重盛亡き後、平家の棟梁となった宗盛は他人の名馬をしつこく欲しがるなど傍若無人ぶりを発揮します。
平家を憎む人々が増えるなか、ついに平氏政権の崩壊へと繋がる治承・寿永の乱が起こります。
争いの中、憎しみを募らせる世界において、重衡・維盛の苦悩や、徳子の「私は許すの」という言葉が印象的でした。
それでは5話を振り返りながら、考察していきましょう!
前回の考察はこちら。
治承三年の政変
重盛が病死し、清盛が福原に引きこもったことをいいことに、関白・松殿基房と後白河法皇が悪だくみをしているようです・・。
後白河法皇が平家の勢力を削ごうと動き始めます。
まず、重盛亡きあと、長男・維盛が相続していた越前の知行国を没収。
さらには盛子が継いでいた藤原家の所領も没収し、さらに人事面では、清盛の娘婿である基通(20歳)を差し置いて、松殿基房の子供・師家(8歳)を権中納言に任命します。
やりたい放題の後白河法皇に、ついに清盛もブチ切れ、大軍を引き連れ福原から上洛。
関白である基房は日向の国に島流し。
(その後基房は出家したため、備前国への島流しに勘弁してもらいます)
当時、関白が島流しになるのは前代未聞のことだったようです。
鹿ケ谷の陰謀では重盛が清盛に掛け合いお咎めなしだった後白河法皇も、今回は鳥羽の離宮に幽閉されてしまいます。
後白河法皇「許さぬ・・許さぬぞ、清盛!!」
自らの不遇を嘆き、清盛への憎しみを露わにする後白河法皇。
自分の子供の財産を奪われた清盛の怒りも、もっともだと思うんですがね😩
この政変により以仁王は所領を奪われており、後に起こる以仁王の乱の直接の原因になったと言われています。
以仁王の乱
以仁王の乱とは高倉天皇の兄である以仁王と、源頼政が打倒平氏の挙兵を計画し、諸国の源氏に決起を促す令旨を発した事件のことです。
きっかけは頼政の息子・仲綱の愛馬「木の下」を宗盛が欲しがったことでした。宗盛は名を「仲綱」と改め焼印を押したり、鞭を打ったりします。
頼政は息子が受けた屈辱を以仁王に涙ながらに話し、令旨を出すよう促します。
しかし計画がすぐに露見して追討を受け、以仁王と頼政は宇治平等院の戦いで敗死、早期に鎮圧されてしまいます。
以仁王の乱を契機に、源頼朝といった反平氏勢力が各地で兵を挙げ、動乱へと発展していきます(治承・寿永の乱)。
治承・寿永の乱で起こった戦いを簡単にまとめました!
高倉天皇の人柄と女性関係
徳子が「お優しい方なのよ」と言う高倉天皇とは、一体どんな人物だったのでしょうか?
高倉天皇の人柄が分かるエピソードが『平家物語 巻第六』紅葉の段にあります。
人柄
「『林間煖酒焼紅葉(林間に酒を煖めて紅葉を焼く)』といふ詩の心をば、それらには誰が教へけるぞや。やさしうもつかまつたるものかな」とて、返つて叡感にあづかつし上は、あへて勅勘なかりけり。
「『林間に酒を煖めて紅葉を焼く』という詩の心を、そなたたちに誰が教えたのか。風流なことをいたしたものだな」といって、かえってお褒めに預かったので、高倉天皇からのお咎めは全くなかった。
『平家物語 巻第六』紅葉
林間煖酒焼紅葉というのは、唐の詩人・白居易の七言律詩の一文です。
林間煖酒焼紅葉 石上題詩掃緑苔
(林間に酒を煖めて紅葉を焼き、石上に詩を題して緑苔を掃う)
唐の詩がさらっと出てくるあたり、高倉天皇は教養がある人だったんですね~。
そしてアニメでは紹介されなかった、もう一つの高倉天皇のエピソードをご紹介します。
主人の使いで装束を運んでいた女童が暴漢に装束を奪われたことを聞き、「そんな不届き者が出るのは、自分の人徳が至らないからだ」と高倉天皇は嘆き、より上質な衣を女童に与えたといいます。
この二つのエピソードだけでも、高倉天皇の柔和な人となりが分かりますね😊
女性関係
これだけ人徳のある天皇であったならば、女性も放っておかなかったでしょうね。
高倉天皇と心を通わせた女性はどんな人がいたのか、その人との間に子が産まれたのかをまとめました。
藤原殖子
高倉天皇は殖子との間に二児を設けます。
後の守貞親王と後鳥羽天皇です。
後鳥羽天皇は、1221年の承久の乱で北条泰時と戦うことになります。
アニメ「平家物語」と並行して、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている方は、「あの時の赤ちゃんが・・」と思う日が来るかもしれませんね😊
小督の局
ちょっと待って!以前ご執心だった小督の局とはどうなったの?
高倉天皇の寵愛を受けた小督の局は清盛によって宮中を追い出されています。
落胆した高倉天皇は源仲国に小督の局を探させ、小督の局が宮中に戻ってくるのですが、清盛の知るところとなり、無理矢理出家させられてしまいます。
出家させられた小督の局は東山の清閑寺で生涯を終えます。
亡くなる前、高倉天皇が小督の局のいる清閑寺に葬られることを望んだため、現在高倉天皇と小督の局は仲睦まじくこの地で眠っています。
登場人物がどんな最期(史実)を迎えるのか、気になる方は合わせてお読みください。
小ネタ:木村昴が木村昴を討伐に行く?
平知盛役を演じている木村昴さんですが、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では以仁王を演じてらっしゃいます。
その為、木村昴さんが木村昴さんを討伐に行っているという摩訶不思議なことが起こっているわけです😂
同時期に放送されているから、こんな不思議なことが起こるのですね。
平家側と源氏側の人間模様を見ることができて、私は楽しく二つの作品を見ることができています。
皆さんはどうですか?
5話の感想
武士として戦いに身を投じながらも、生来の優しさゆえに苦悩する維盛や重衡が描かれました。
清盛を憎む後白河院の目と、血みどろの戦場の頭上で不気味に輝く太陽が重なって見えます。
双方の悲しみと憎しみが積み重なっていく中、徳子が「許して、許して、許すの」と言ったことがとても印象的でした。
でも、私は世界が苦しいだけじゃないって思いたい。
私たちは徳子や安徳天皇がたどる運命を知っています。
それでも、彼らは「今」ここで生きている。
ただ歴史上の人物を描くというよりは、そこに生きている人達を描いているように思います。
登場人物たちはよく笑い泣きます。
もうすぐ死んでしまうのに。
しかし花が枯れると分かっていても、咲き誇るのを美しいと思うように、「今」を生きる彼らはきっと、見る私たちに何かを残してくれると思うのです。
3月10日発売予定のディレクターズ・ノートでは、「叙事詩ではなく叙情詩を」と書かれています。
山田尚子監督エッセイ、山田尚子×高野文子対談を収録。
描き下ろしカット他多数収録されているとのこと。
こちらも楽しみです!
また、2月10日(木)発売のニュータイプ3月号にて、平清盛役・玄田哲章さんと後白河法皇役・千葉繁さんのスペシャル対談が掲載されています!
まさかの組み合わせにビックリです😲
どんな対談になっているのやら・・「清盛!」「後白河法皇!」とか言って、喧嘩になったりしないですよね?🤭
次の話の考察を読む。
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